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『「生きがい年金」への道』講演概要

10月講演会

いのうえ
10月24日(木)インテリジェントロビー・ルコにて、ジャーナリストの北沢栄様をお招きし『「生きがい年金」への道』講演会を開催致しました。

10月 講演会風景

本講演会の事前ご案内に記載しました下記4項目に従い講演は進められました。

1.年金の何が問題か
2.現行年金制度(100年安心年金)の特性
3.社会保障制度改革国民会議の議論と結論
4.「生きがい年金」改革(2段階方式)の提案

講演に当たり、北沢様は先ず上記項目を表す下記の言葉を示されました。

1.日本の年金制度の持続可能性に不安
2.国民年金のまやかし
3.「100年安心年金」は機能せず
4.抜本改革は「税+積立方式」

これらの言葉を示された後、本題に入られましたが、その概要は次の通りです。



日本の年金制度は働き手の現役世代が拠出する保険料によって高齢者の年金が賄われる賦課方式である。賦課方式は労働力人口が増えることを前提にした方式である。

日本は1970年後半から出生率が減少しており、人口置換水準の出生率2.1%を大幅に下回っているため、この状況が続けば、現行賦課方式の持続可能性に不安が高まるのは必然的なものである。

特に、世代間不公平から若者に年金不信・将来不安が高まっている。

若者の間に広がる年金不信と非正規雇用者の増加は、悪化する国民年金保険料の未納率に現れており、2011年度は41.4%となっている。
更に、経済的理由などによる納付免除者や納付猶予者を合わせると、実質未納率は、第一号被保険者(約1,940万人)の約74%に達する異常な状態にある。

このような空洞化が進んでいるにも拘わらず国民年金が納付者に約束通り支払われているのは、民間サラリーマンの給与から天引きされた厚生年金と公務員らの給与から天引きされた共済年金の原資から拠出されているからである。

即ち、国民皆保険が実現した昭和60年体制の基礎年金には「まやかし」が存在する。

100年安心プランと呼ばれた2004年の年金改革には、重大な設計ミスがあった。

制度の持続可能性を確保するという理念では悪くなかったが、具体的な方法論に問題があった。

それは、給付水準を自動調整して抑制するために導入した「マクロ経済スライド」において、賃金や物価の上昇を当たり前として想定したことにある。
即ち、デフレを頭に入れていなかったのである。

実質賃金上昇率を年1.5%と見込み「賃金が上がっていけば通常は物価上昇率よりも賃金上昇率が大きいため、そのときどきの現役世代の所得に対する年金額の比率は(物価スライド方式なので)低下していく」とした。

デフレ経済の下でこの根底が崩れ、マクロ経済スライドは機能しなくなった。年金財政の維持に不安が起こり、支給開始年齢の引き上げ議論が噴出した。

また、現役世代にとっては2004年から2017年まで毎年0.354%保険料が引き上げられることとなったため、厚生年金の保険料率は2017年に給与の18.3%となる。

厚生年金は働き手と雇用主が折半で負担することになっており、働き手にとっては大きな負担となるが、雇用主にとっても同様で、ここに企業が非正規雇用者を減少させたくない原因の一つがある。

非正規雇用者の増加は年金拠出者の減少そして将来的には無年金者の増加に繋がるものであり、現行年金制度の大きな問題点である。

昨年11月から今年の8月にかけて議論された社会保障制度改革国民会議において、具体的な年金改革提言が期待されたが、理念や課題を提示しつつ、支給開始年齢の引き上げ等の具体策は先送りされた。

それでは、現行制度を改革し、「生きがい年金」を得るためにはどのような制度が望ましいのか?

現制度を長持ちさせるために、高所得者負担増、短時間労働者の適用拡大、子育て・出向対策(静岡県長泉町やフランスの例を提示されました)、外国人移入政策等が考えられるが、より根本的な制度改革が望ましい。

米国大手の年金・財務コンサルティンググループ「マーサ」が発表した「グローバル年金指数ランキング」では、日本は中国や韓国よりも下位の17位とランクされたが、この原因は持続性が28.9%と際立って低いことにある。

この「マーサ」のランキングではデンマーク、オランダ、オーストラリア、スエーデン等の国が上位を占めているが、この中でオーストラリアの年金制度が「生きがい年金」として最も参考になる。

オーストラリアの年金制度では、1階部分が社会保障年金(老齢年金)であり、全額税金で賄われる。これによって、生活資力のない高齢者が救われる。

2階部分の退職年金保障は積立方式で保険料は全額雇用主及び自営業者が拠出する。雇用主に被用者の給与の9%の拠出を義務づけており、これに私的年金として被用者が自主的に上乗せ拠出することも可能である。

この年金制度は、①簡潔で分かり易い、②税を活用し国民全体が基礎年金を受給できるよう工夫されている、という特徴を持っており、国民が安心してリタイア後の年金生活を迎えられる安心設計となっている。

オーストラリアの2011年4半期現在の1階部分社会保障年金受給額は、夫婦各豪ドル519.40/2週間である。

結論として、日本の現行年金制度は持続性に不安があり、「生きがい年金」への道として、「賦課方式」からオーストラリアのような『「税+積立方式」の2段階方式』へと抜本的な制度変更を検討すべきである。



以上のように、非常に中身の濃い講演内容でした。

日本の年金制度については、5年毎に見直すこととなっており、来年が見直しの年に当たります。

年金は私達の生活に最も密着したものであり、北沢先生の講演は、年金制度改革がどのような議論がなされていくのか、よくウォッチする必要があることをあらためて考えさせられるものでした。

以上

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